有効な抗がん剤治療により治癒も可能に
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化する悪性腫瘍。白血病と同じ血液のがんだが、異なるのは血液やリンパ液に乗ってがん細胞が容易に全身に運ばれること。特にリンパ節を中心に浸潤し、リンパ節を増大させてしまう。
血液は、血漿と血漿中に浮遊している血球で構成され、血球には赤血球、白血球および血小板の3種がある。赤血球は酸素や栄養分を運ぶ、血小板は出血をとめる、白血球は外からの侵入者から体を守る、といった役目を担い、主に骨髄で幹細胞として作られている。中でも白血球は、細菌などを食べる顆粒球、ウイルスを攻撃するリンパ球、マクロファージ(単球)に分かれる。さらにリンパ球はB細胞、T細胞、NK細胞の種類がある。
血球はそれぞれ持続的に産生され常に新しいものと置き換わるが、それと同時に赤血球は1立方ミリメートルの血液中に約450万個、白血球は5000個そして血小板は15万個と一定に調節されている。しかし、その調節機能が破綻し、無制限に血球が増加する病気が白血病。そして細胞分化する際にリンパ球ががん化するのが悪性リンパ腫だ。原因はまだ解明されていないが、ウイルス感染で発生するものがあることが分かってきている。
悪性リンパ腫は、大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つがある。ホジキンリンパ腫は日本では少なく約1割程度。残りの9割を占める非ホジキンリンパ腫は形態学的特徴、細胞形質的特徴、そして染色体・遺伝子情報などをもとに分類。「この分類は、腫瘍細胞の悪性度とその後の臨床経過、予後を推定し、治療法を選択するために大変重要。この分類を確定することにより、治療が開始される」と森岡正信医師は言う。
悪性リンパ腫および白血病が専門
森岡医師が名誉院長を務める愛育病院は、2014年6月より医療法人菊郷会グループに加わった。
同院は1957年に財団法人小児愛育協会附属病院として開設された札幌でも由緒、伝統のある病院。
小児科のみならず、血液内科、消化器内科、消化器外科とも北海道大学との連携のもと高い水準を保ち、急性期病院として地域医療ならびに先進医療に取り組んでいる。
開設当初から北大小児科、第三内科、第二外科の関連施設で、現在は内科、血液内科、消化器内科、循環器内科、外科のほか各科ともに臨床経験豊富な医療スタッフによる診療体制を構築している。道内には血液疾患専門の診療科は少ないが、愛育病院はその一つ。森岡医師は内科・血液内科の陣頭指揮を執る一方、白血病および悪性リンパ腫の医師としても知られている。
「悪性リンパ腫の治療は抗がん剤を用いる化学療法が中心です。分子標的治療薬の一種である抗がん剤リツキシマブは、アポトーシスなど従来の抗がん剤と異なる作用で抗がん効果を発揮し、日本人に多いB細胞性非ホジキンリンパ腫に非常に有効的です」(森岡医師)。症状が改善するだけではなく、治癒する症例も数多く出てきているとのことだ。
首の付け根などのしこりに気づいたら受診を
リンパ液が流れるリンパ管は静脈に沿うように体中に張り巡らされ、リンパ管が合流するリンパ節は個人差があるが全身に600カ所くらい。首の付け根、脇の下、足の付け根などに多く存在している。「悪性リンパ腫の初期症状はほとんどありません。しかし、リンパ節が多い首の付け根や脇の下などにできる痛みのないしこりに気づくことがあります。その際は直ちに血液専門医を受診することをお勧めします。悪性リンパ腫は進行度に合わせた適切な治療により予後に期待が持てる時代になっています」と森岡医師は語る。