難症例にも対応 日帰り手術で難聴の完治を目指す
高齢になるとどうしても耳の聞こえが悪くなる。耳鳴りも同様だが、加齢によるものと自己判断し、我慢してしまう人は少なくない。それに警鐘を鳴らしているのが桝谷将偉院長だ。「聴力の低下や耳鳴り、耳漏、めまい、顔面神経麻痺といった症状は、その裏側には慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎、外耳道狭窄症、耳小骨奇形、滲出性中耳炎といった難聴を引き起こす疾患が潜んでいることもあります。これらの疾患に起因する難聴は年齢問わず手術で治る可能性が高い」と話す。
日帰り手術で身体・経済的負担を軽減
一般的に前述の疾患が原因である難聴の場合、適応となる手術は鼓膜・鼓室形成術と呼ばれる術式だが、身体に負担がかかる全身麻酔が必要となる。しかも術後1~3週間程度の入院を余儀なくされることから二の足を踏む人が多いのが現状だ。その点、桝谷院長がおこなう耳鏡下耳内耳科手術は日帰りが可能な方法だ。わずか数時間で聴力を取り戻すことができる。
メリットは他にもある。従来の手術では耳の裏側を4センチほど切開する必要があるのに対し、この手術は顕微鏡下のもと耳鏡と呼ばれる特殊器具を使用するため、耳の深部を6−7ミリほど切開するのみ。手術時間も従来の半分の30分から2時間程度に短縮している。ただし、術野が狭くなるため、医師に求められる技術は当然高くなる。桝谷院長は、耳鏡下耳内耳科手術を開発した耳科手術医「仙台・中耳サージセンター」の湯浅涼医師に師事し、技術を習得。道内でただ一人の耳鏡下内耳科手術の使い手として、これまでに400例以上(2021年7月現在)を経験してきた。 また、局所麻酔を使用するため、術中に聞こえの変化を確認できることも大きなポイントだ。 「全身麻酔下では術中に患者に聞こえの確認をできないため、術後の状態が思わしくなければ再手術が必要です。しかし、局所麻酔下ではその場で患者に聞こえの確認をしながら、さまざまなアプローチを試みることができる。つまり、よりよい治療を選択できます」と桝谷院長。複数疾患を抱える高齢者も手術を受けることができる。手術費用は保険が適用となり、さらに高額療養費制度を申請すれば、75歳以上で1万5000円ほどだ。