道内でも執刀医の少ない 硝子体手術を実施
目は角膜や水晶体、網膜、視神経、瞳孔、硝子体などで構成され、これらの構造部によって様々な疾患が起こる。例えば、水晶体の病気である白内障、結膜の病気であるアレルギー性結膜炎などが代表的だ。また、網膜と硝子体に起きる疾患は一般的に網膜硝子体疾患と呼ばれる。網膜剥離、加齢黄斑変性などがよく知られているだろう。
網膜の役割はカメラに例えるとフィルムだ。角膜を通って瞳孔から眼球内に入った光は、水晶体で屈折され、硝子体を通り網膜に到達。見えると感じるのは、網膜で感じた光の刺激が視神経を通って脳に伝えられるためだ。
約0.1 ~ 0.4 ミリの薄い膜で、10 層に分かれている網膜。内側の9層は神経網膜といい、外側の1層は網膜色素上皮細胞と言う。網膜の中で一番重要なのは中央にある黄斑部で、視力や色の識別に関係している細胞がある。
この網膜を内側から支えているのが硝子体だ。硝子体はガラスのように無色透明で、ゲル状のドロドロした物質。水晶体のうしろから網膜の前まで眼球の大部分を占め、形を保つ役割がある。また光が通りやすく、入ってくる光を屈折させるのだ。
網膜と硝子体は接しているため糖尿病網膜症、網膜剥離、一部の黄斑疾患などでは互いに影響し合っている。荻野哲男医師は、「網膜硝子体疾患の特徴は、視力低下を引き起こすこと。また進行してしまってからでは視力の回復が十分に果たされないケースがある。早期発見・早期治療が視力回復には欠かせない」と警鐘を鳴らしている。
わずか30分程度で日帰り手術も可能
網膜硝子体疾患に対しておこなわれる硝子体手術は、剥離した網膜をつけたり、網膜にできた増殖膜や網膜の穴などの治療、あるいはにごりや出血のある硝子体を取り除くことで機能を回復させる。
「現在の硝子体手術は、白目に0.5ミリ程度の小さな穴を3カ所空けておこなうため、縫合の必要もない。また30分程度の短時間で終わり、日帰り手術も可能だ」と荻野医師は硝子体手術の現状を教えてくれた。
ただ網膜硝子体疾患は、白内障手術などとは違い症状が多種多様だ。そのため数多くの経験がないと、硝子体手術をひとりでおこなうことはできない。その点、荻野医師はこれまでに1500以上の手術を執刀するなど、豊富な経験を持つ。また、難症例の白内障手術3000例のほか、緑内障手術なども多数例執刀。加齢黄斑変性、糖尿病網膜症などに対するレーザー、眼内注射も多くの件数をおこなってきた。
臨機応変な対応で失明の危険を回避
荻野医師は、札幌医科大学を卒業後、札幌医科大学眼科、アメリカのインディアナ大学眼科で基礎研究に勤しみ、 その後市立札幌病院眼科で臨床、研究に精進。学会や講演会も演者として100回以上発表している。
2012年7月には「北広島おぎの眼科」を開院。コンタクトレンズの処方を含めすべての眼科疾患に対応し、地域医療に貢献している。「札幌近郊では大規模な病院でしか硝子体手術を実施しておらず、失明の危険にありながら手術の順番待ちをしている患者も多い。そのため当院では、大病院とは違い危険度の高い手術を優先するなど臨機応援に対応している」と荻野医師。同院では初診でも待ち時間が軽減するよう、インターネットからの予約も可能だ。