見逃されやすく、 誤った治療を継続しているケースも
間質性膀胱炎。あまり聞き慣れない疾患名だが、欧米では10万人あたり200~300人、疑わしい患者数は680人と報告されている。日本国内の調査では、週1回以上膀胱痛がある人は2.2%、1日1回以上痛くなる人は1%という結果があり、この中に間質性膀胱炎の患者が多数含まれているとされている。
患者のほとんどは女性で、代表的な症状は膀胱痛や頻尿、排尿痛。急性膀胱炎に似た症状を示す場合は抗菌薬などが処方され、過活動膀胱と似た症状の場合には頻尿改善薬などが処方されたりする。そのため正式な病名を知らないまま治療を続けている患者が多いのが現状だ。
北海道泌尿器科記念病院の飴田要医師は「他の膀胱における疾患と症状が酷似しているため、診断がつくまでに時間がかかる場合がほとんどです。症状が出現してから診断がつくまでに5年、10年かかった患者もいました。尿もれがなく、過活動膀胱として治療しても良くならない場合は間質性膀胱炎を疑ってみるべきでしょう。女性に特に多い病気ですが、男性でも前立腺炎や前立腺肥大症として治療している患者の中にこの病気が潜んでいるケースもあるので、注意が必要です」と警鐘を鳴らしている。
半数以上の患者に有効な水圧拡張術
膀胱は、腎臓から尿管を通って流れてきた尿を一時的にためておくための臓器。骨盤の中におさまっており、尿が溜まると球状に膨らむ。
通常の膀胱炎は細菌による尿路の感染が原因のため、ほとんどは抗生物質で治る。しかし間質性膀胱炎の原因は不明。飴田医師は「自己免疫や感染、膀胱の虚血、尿路に関わる神経の過剰な興奮、尿中の毒性物質などが複雑に関連して病気の原因となっている可能性もあります」と話す。
間質性膀胱炎の治療の基本は生活指導と食事療法。「酸性飲料水やコーヒー、香辛料、アルコールなどが痛みを増強させるため、これらを控えること。
多めに水を飲む習慣をつけることも大切です。また精神的ストレスは症状を悪化させる可能性があります」(飴田医師)。症状が軽い場合は抗アレルギー薬や抗うつ薬などが有効なこともある。
一方、診断と治療をかねて行う水圧拡張術は、治療の柱である。膀胱の中に生理食塩液を一定の圧力で注入し、膀胱を強制的に拡張させるもので、物理的な効果だけでなく、病変部の炎症を改善させる効果もあるという。飴田医師は「十分な治療のためには入院の上麻酔が必要となりますが、水圧拡張術は約半数以上の患者に有効です」と自信を見せる。
道内で数多くの実績
北海道泌尿器科記念病院は1987年の開院。あらゆる泌尿器疾患に対応し、腎結石・尿路結石治療はもちろん、前立腺がんや膀胱がん、腎がんなどの尿路系悪性腫瘍の手術などにも多大な実績を残している。特に膀胱悪性腫瘍手術は年間約200例。「豊富な実績」となっている。
飴田医師は北海道大学医学部卒で、同大学助手時代に文部科学省長期在外研究員として、米国ハーバード大学泌尿器科での研究実績もある。膀胱尿道機能障害を専門とし、神経泌尿器科学、尿路水力学、前立腺肥大症、尿失禁、間質性膀胱炎、女性泌尿器科に精通。腎不全や透析治療なども得意とし、腹腔鏡手術、前立腺や尿路結石の内視鏡手術の症例も豊富だ。同院では、尿失禁・女性泌尿器科外来の担当医も務めている。間質性膀胱炎にも多数の実績がある。